PageSpeed最適化に失敗しがちな日本特有の落とし穴と回避法

共用サーバー利用による速度低下の盲点

日本国内では、Webサイト運営コストを抑えるために多くの企業や個人が共用サーバー（レンタルサーバー）を選択しています。しかし、この「コスト重視」の選択が、PageSpeed最適化の大きな障害になるケースが少なくありません。

なぜ共用サーバーがPageSpeed改善の足かせになるのか？

共用サーバーとは、複数のユーザーが同じ物理サーバーのリソース（CPU、メモリ、ディスク容量など）をシェアして利用する仕組みです。以下のような問題点があります。

問題点	具体的な影響
他サイトの影響を受けやすい	同じサーバー内でアクセス急増や不正利用があると、自分のサイトも遅くなる
リソース制限が厳しい	大量アクセスや画像・動画データの多用ですぐに上限に達し、表示速度が低下
カスタマイズ性が低い	キャッシュ設定や高速化モジュール導入など細かな最適化が難しい場合が多い

日本でよくある共用サーバー利用のシチュエーション例

• 中小企業公式サイトやECサイト、小規模ブログなどで「とりあえず安価なプラン」を選択するケースが目立ちます。
• コーポレートサイトでも「知名度の高い大手レンタルサーバー」を選んで安心しきってしまうことも。
• アクセス増加時やキャンペーン時に表示遅延・ダウンを経験し、「なぜ最適化しているのにスピードスコアが上がらない？」と悩む例も多々見られます。

回避法：専用サーバーやクラウド移行を検討するポイント

PageSpeed改善を本気で目指すなら、下記2つの方法を検討しましょう。

方法	特徴・メリット	注意点
専用サーバー（VPS含む）	自分だけでリソースを独占でき、高度なカスタマイズも可能。安定した表示速度を実現しやすい。	コストは高め。初期設定・運用には一定の知識や管理工数が必要。
クラウド（AWS、GCP、さくらクラウド等）	アクセス増減に応じて柔軟にリソース拡張可能。ページ高速化関連サービスも充実。	料金体系が複雑になりやすく、慣れるまで設定に手間取ることも。

クラウド移行時の検討チェックリスト（例）

• 現在のトラフィック量と今後の成長予測はどうか？
• どこまで自社で管理・運用できるか？外部業者への委託は必要か？
• 必要なセキュリティ対策やバックアップ体制は整えられるか？
• 将来的な費用負担は無理なく続けられる範囲か？

まとめ：日本ならではの「とりあえず共用サーバー」から一歩踏み出そう！

「コスト重視」の文化は大切ですが、それによってWebサイト表示速度やユーザー体験を犠牲にしてしまっては本末転倒です。PageSpeed最適化に本気で取り組むなら、まずはご自身のサーバー環境から見直してみましょう。

2. 画像最適化の優先順位誤認

日本文化が生み出す「高画質信仰」の罠

日本では、美しいビジュアルや細部へのこだわりが評価される文化背景から、Webサイトでも画像のクオリティに特に気を遣う傾向があります。そのため、「できるだけ高解像度」「大きめサイズで掲載」という方針がよく見受けられます。しかし、これがPageSpeed最適化の妨げとなり、ページの読み込み速度低下やユーザー離脱につながってしまうことも少なくありません。

画像フォーマットの選定と変換

伝統的なJPEGやPNGだけでなく、近年はより軽量で高品質なWEBP形式が主流となっています。各フォーマットの特徴を下表でまとめました。

フォーマット	特徴	推奨用途
JPEG	高圧縮率、写真向き	写真・複雑な画像
PNG	透過対応、無圧縮	ロゴ・イラスト
WEBP	高圧縮＆高画質、透過可	ほぼ全ての用途（モダンブラウザ）

特にWEBPは、ファイルサイズを小さくしつつ画質も保てるため、導入メリットが大きいです。多くのCMSや画像編集ソフトで簡単に変換できますので、新規アップロード時や既存画像の差し替えに積極的に利用しましょう。

Lazy Load（遅延読み込み）の効果的な活用方法

ページ表示速度を大きく左右するのが「ファーストビュー」に表示されない画像の読み込みタイミングです。Lazy Load（遅延読み込み）機能を使えば、ユーザーがスクロールした際に初めて画像を読み込むため、初期表示速度が大幅に改善します。WordPressの場合、「loading="lazy"」属性をimgタグにつけるだけで簡単に実装可能です。

Lazy Load導入前後の比較例

項目	導入前	導入後
ファーストビュー表示速度	2.5秒	1.2秒
画像読み込み総数（初期）	15枚	3枚
Lighthouseスコア（パフォーマンス）	65点	90点以上

Lighthouseスコアや体感速度にも明確な違いが現れるため、日本独自の美意識とPageSpeed最適化を両立させるには、「高画質＝正義」から一歩進んだ画像管理と工夫が必要です。

3. 日本語フォントによる表示速度遅延

日本語WebフォントがPageSpeedに与える影響

日本のWebサイトでは、美しい日本語表示を求めて特定のWebフォントを多用するケースが多く見られます。しかし、日本語フォントは欧文と比べてデータ量が非常に大きいため、読み込みに時間がかかり、ページ表示速度を大きく低下させる原因となります。特に複数種類のWebフォント指定や太字・斜体などバリエーション指定が重なると、さらに通信負荷が増します。

よくある日本語フォント指定の落とし穴

落とし穴	説明	PageSpeedへの影響
大量のWebフォント読み込み	明朝体・ゴシック体など複数同時指定	通信量増加・初回描画遅延
Google FontsやAdobe Fontsの安易な利用	CDN経由で毎回ダウンロード発生	サーバー応答や回線速度に依存しやすい
@font-faceによる自前ホスト	最適化されていない巨大ファイル使用	モバイル・低速回線で特に遅延が顕著
日本語以外も全フォント埋め込み	不要な文字セットまで含むケース多数	ファイル容量肥大化・無駄な転送発生

日本語フォント最適化の実践ポイント

• 必要最小限のフォントのみ指定する：明朝体・ゴシック体など最低限に絞り、装飾用は画像やSVG活用も検討しましょう。
• サブセット化（部分配布）を活用：@font-faceで使う場合は、必要な文字セットだけ抜き出したサブセット版を作成すると効果的です。
• ローカルフォールバック設定：ユーザー端末に既存する日本語フォント（例：メイリオ、游ゴシック）を優先して利用することで、Webフォント未読込時でも美しい表示を維持できます。
• display:swap; の活用：@font-faceで「font-display: swap;」を指定すると、Webフォント未読込時には即座に代替フォントが表示されるため、FOUT（Flash of Unstyled Text）現象も防げます。
• CWYW（Critical Webfont You Want）の考え方：本当に必要な見出し部分だけWebフォント、それ以外は標準フォントという使い分けも有効です。

ローカルフォールバック例（CSS記述）

font-family: "Noto Sans JP", "メイリオ", "ヒラギノ角ゴ ProN W3", Meiryo, sans-serif;

上記のように指定することで、ユーザー環境に存在する日本語フォントを優先しつつ、Webフォントは必要な場合のみ使用できます。これにより、日本独自の美しいタイポグラフィとPageSpeed最適化の両立が可能になります。

4. プラグインや外部サービス依存の落とし穴

日本のCMS利用状況とプラグイン増加の背景

日本ではWordPressなどのCMS（コンテンツ管理システム）が広く使われています。特に中小企業や個人ブログ、地域団体のサイト運営者は、専門的な知識がなくても簡単に機能拡張できる「プラグイン」や「外部サービス」を便利に感じ、積極的に導入しています。しかし、その便利さゆえに気付かぬうちにページ表示速度が大幅に低下してしまうケースが多発しています。

よくある速度低下事例

導入例	起こりやすい問題	具体的な症状
フォーム系プラグイン（お問い合わせ・予約）	JavaScriptやCSSの読み込み増加	初回表示が遅い、スクロール時のカクつき
アクセス解析/チャットサポート等 外部サービス連携	外部サーバーへの通信遅延	一部コンテンツの読み込み完了が遅れる
画像ギャラリー・スライダー系プラグイン	画像最適化不足・大量ロード	モバイルで極端に遅くなる
SEO対策系プラグインの重複導入	同じ処理の競合・無駄なリソース消費	管理画面も重くなることがある

依存度を見極めるポイント

• 本当に必要な機能か？
  そのプラグインや外部サービスは今の運用で必須なのか、実際に活用されているかを棚卸しましょう。
• 類似機能との重複はないか？
  同じ用途のプラグインが複数動いていないか確認します。
• 速度への影響を計測したか？
  PageSpeed InsightsやLighthouseで該当プラグイン有無によるスコア変化をチェックします。
• 公式サポートや更新頻度は十分か？
  長期間メンテナンスされていないものはトラブル要因になりやすいです。

断捨離（アンインストール）の進め方と注意点

1. 不要と思われるプラグイン・サービスをリストアップする。
2. 一つずつ停止し、表示崩れや機能不全が出ないか確認する。
3. 問題なければアンインストール、またはコードベースで代替可能なら移行を検討する。
4. どうしても外せない場合は軽量化設定（例：必要ページのみ読み込む設定など）を探す。
5. 定期的に棚卸し作業を行う習慣をつける。

ワンポイント：日本語対応プラグイン選定時の注意点

日本向けに開発されたプラグインでも、海外製より速度最適化意識が低いケースがあります。公式レビューだけでなく、実際の速度検証結果も参考にしましょう。

5. 公的機関・企業独自仕様との両立課題

日本のWebサイト制作では、自治体や大手企業などでJIS（日本工業規格）に準拠したアクセシビリティ対応や、独自ガイドラインへの対応が求められることが多くあります。しかし、これらのカスタマイズはPageSpeed最適化と相反する場合があり、パフォーマンス向上の妨げとなりがちです。ここでは、日本特有の事情と、その両立に向けた設計思想について解説します。

よくある独自仕様とPageSpeedへの影響

独自仕様例	PageSpeedへの主な影響
JIS X 8341-3 準拠（アクセシビリティ強化）	画像代替テキストや構造化マークアップ増加によるHTML肥大化、追加スクリプトで読み込み遅延
自治体・官公庁CMSテンプレート利用	古いCSS/JSライブラリの併用、不要なコード残存による速度低下
企業独自デザインガイドライン厳守	統一感維持のため重いWebフォントや高解像度画像を多用し、表示速度が落ちやすい

要件を満たしつつPageSpeedも意識する設計ポイント

• ガイドライン要件の「本質」を見極める： 形式的な遵守ではなく、「情報伝達性」や「操作性」など本来求められている価値を軸に最適化ポイントを整理しましょう。
• 軽量フレームワーク・コンポーネント活用： 必須要件を満たす範囲で無駄なコードを省き、必要最小限のスクリプト・スタイルのみを使用します。
• 画像・アイコンはSVGやCSS描画へ： デザインルールを守りつつ、WebPやSVGなど軽量フォーマットへの置き換えを積極的に検討しましょう。
• CMSテンプレートも定期的に見直し： 自治体や大手企業独自のテンプレートでも、パフォーマンス改善策（キャッシュ制御・遅延読み込み等）の導入余地があります。
• ベンダー／外部委託時はPageSpeed要件明記： 発注書や仕様書に「PageSpeed Insights◯点以上」など明確な指標を盛り込むことで、実装段階から両立しやすくなります。

現場担当者が注意したいポイント

• 「JIS対応＝冗長なHTML」にならないようにする
• デザインガイドラインの解釈次第で最適化余地が生まれることも多いので柔軟に相談する
• 旧世代のライブラリ・プラグインは最新版か見直す癖をつける
• パフォーマンス測定ツール（Lighthouse, PageSpeed Insights等）で常時モニタリングする習慣づけ

まとめ：ガイドライン遵守と高速表示の両立は可能？

日本独自の厳しいWeb制作要件下でも、「何が本当に必要か」を精査しながら最適化技術を組み合わせれば、高速表示とガイドライン遵守は両立できます。現場のコミュニケーションと工夫次第で、ユーザー体験も保ちながらPageSpeedアップを目指しましょう。

6. 運用体制と更新ワークフローの問題

日本企業では、Webサイト運用や開発が分業化されているケースが多く見られます。特に大手企業や老舗企業ほど、制作・管理・運用・マーケティング部門がそれぞれ独立しており、情報共有がスムーズに行われないことがあります。このような体制下では、PageSpeed最適化を一度実施しても、その後の定期的な大規模更新（リニューアルやキャンペーンページ追加など）で最適化内容が形骸化しやすいという、日本ならではの落とし穴があります。

日本企業によくある運用体制の課題

課題	具体例	影響
分業による情報断絶	更新担当者が最適化ルールを知らない	画像圧縮忘れや無駄なスクリプト追加
大規模更新時のチェック漏れ	デザイン刷新時にPageSpeed対策が抜ける	読み込み速度が急激に低下
外部委託の多用	複数ベンダーに依頼している	最適化基準が統一できない

形骸化を防ぐためのポイント

• 明確なガイドライン作成：PageSpeed最適化に関する社内マニュアルやチェックリストを作成し、全担当者に周知徹底しましょう。
• 部門間コミュニケーション強化：定期的なミーティングやチャットツールを活用し、情報共有の場を設けることが重要です。
• ワークフローへの組み込み：新規ページ作成や大規模更新時には必ずPageSpeed診断・対策プロセスをワークフローに組み込むようにします。
• 継続的なモニタリング：LighthouseレポートやGoogle PageSpeed Insightsの定期計測を運用フローに加え、数値の変動を都度確認しましょう。
• 外部パートナーとの基準共有：制作会社やシステム会社にも最適化基準を伝え、一貫したクオリティ管理を心がけましょう。

おすすめ運用ワークフロー例

フェーズ	担当部門/担当者	主なチェック項目
企画・設計段階	マーケ・Web担当者	画像・動画点数／サーバー構成確認／最適化要件整理
制作段階	制作会社・開発担当者	Lighthouseテスト／コード軽量化／遅延読み込み設定等
公開前検証段階	全体レビュー担当者	Lighthouse再チェック／不要リソース除去／表示速度確認
運用・保守段階	Web担当者・制作会社等	月次でPageSpeed計測／定期レポート共有／改善アクション実施

ポイントまとめ（参考）

• 「誰が」「どのタイミングで」「何をチェックするか」を明確にすることで、最適化の形骸化を防げます。
• SNSやグループウェアで最新情報共有も有効です。
• “運用”そのものの継続的改善意識を持つことが、日本企業には特に重要です。